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2011年11月18日金曜日

留学して気づいた日本とアメリカの大学の7つのこと

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とてつもなくご無沙汰しています。書こう書こうと思っても、やはり筆は重くって、なかなか記事を書けずにいました。

正直なところ、勉強や課題をこなすペースも相当慣れてきて、そこまで死ぬほど忙しい、ということはなくなってきたのですが、同時に甘えも出てきて、ぎりぎりまで課題に手をつけないという悪い癖が生まれてしまいました…笑

さて、ここでいきなり告知です。
現在ご支援いただいている小山八郎記念イリノイ大学留学制度のウェブサイトにレポートが掲載されました。こちらのブログには書いていないような話も掲載していますから、是非ご覧ください。

また、米国大使館の留学記事ライターもいよいよ始まりました。こちらは、Connect USAという米国大使館の運営しているウェブサイトです。

上記の記事との差別化をどう図るか、ということをしばらく考えていたのですが、上記ブログは「レポート」という側面が強く、そこまで自分の意見を大々的に載せてはいけない気がなんとなくしています…(笑)まぁ、そこまで強く意識はせず、またぼちぼちと書いていきたいと思います。

いよいよ今週末からサンクスギビングの休暇になります。今週末から来週末にかけて、9日間の連休です。アメリカ人はだいたい実家に帰って家族と休暇を過ごすことが多いのですが、留学生はそうはいきませんから、旅行に行く人が多いようです。というか、休暇中は寮が閉められてしまうので、寮を出ざるをえず、結局旅行に行かざるを得ない、ということなのです笑
自分の場合、研究や課題が山のように出る予定なので、はじめの数日は大学周辺にとどまり(先輩の家に泊めていただきます)中盤からシカゴでルームメイトの家に行ったり、友達と観光したりする予定です。実は、イリノイ大学に通いながらも、いまだにシカゴはオヘア空港しか行った事がないのです笑(オヘアではもう2泊しています…)
ですから、サンクスギビングの休暇はとても楽しみにしています。しばらく勉強から離れるのも悪くないなぁと思いながらも、休暇が終わったあとの期末試験に戦々恐々としていますが…。

まぁ、そんなこんなで留学してから3ヶ月となりました。あっという間の3ヶ月、あと1ヶ月で今学期も終わりです。3ヶ月しか留学していない自分ですが、色々と思うところがあり、今日は「アメリカの大学が1番とは思わない」ということを書きたいと思います。



自分は、日米学生会議に参加していたり、アメリカに留学していたりするのでよくそのことを話します。夏のHCJI-LAB Summer Schoolだって、ハーバードの学生が絡んでいるし(そういえば、今日の写真はハーバードの門です!)、とにかく海外の話がきっと多いのでしょう。だから、たまに(よく?)「海外のケースばかり話すから日本(と日本の教育)を全否定している」と言われることがあります。

いやいや、そんなこたぁないですよ。だって、俺は日本の教育はすばらしいと思っているもの。事実、その日本の教育の権化みたいな人間ですし(笑)日本の教育を否定するということは自分自身を否定する、ということになりますしね。

じゃあなぜ海外の事例や海外の教育についてよく話すのか。それは別にreplicateして日本でもまるまる同じことをやれという意見ではないんですよ。「そういった教育を受けた人たちもいる」という事実を受け止め、彼らと将来戦っていかなければならない、という覚悟をし、それで彼らの良いところを頂いてしまおう、という、そういった意見のつもりです。
日本の教育は相当良いんじゃないでしょうか。だってこんなにみんな問題なく読み書きそろばんができて。そして一流の研究者だってそれなりには多いはず。でも、勿論問題もたくさんあります。外国に学ばなければならない所もたくさんあると思います。日本にずっといたって、留学をした人や海外大学を卒業した人よりもすごい人だっているし。逆に言えば、留学したって全然ダメな人はダメなんだと思います。(という話を、この前ボストンでずっとしていました笑)

だから別に俺は留学至上主義でも海外大学至上主義でもありません。アメリカの大学が1番とは思いません。でも、繰り返しになりますが、日本の大学が、日本の大学生が、留学生や海外大学に学ぶべきところは、山ほどあると思います。同時に、日本の大学の優れたところも、アメリカの大学・大学生に学んでほしいなぁって思います。


じゃあ、具体的にどこが良くって、どこを見習うべきなのか、ということに移りましょう。

ここで書かせていただくのは、自分自身のたった3ヶ月程度の留学で感じたことであることは、但し書きとして書いておかなければなりません。3ヶ月という短いスパンかつイリノイ大学という1つの大学をサンプルとして意見を述べている、ということです。ですから、今後検証が必要だと思うものもあると思いますし、反論も当然考えられるでしょう。自分でも相当未熟な意見であることは承知して書いているつもりですので、そこらへんはご容赦を。そして、どこかで見た、聞いたような意見が大半を占めると思います。



1.アメリカは全てがインタラクティブ

こちらの大学に来て大いに感じることが、仮にそれが大人数の授業であったとしても双方向(interactive)な授業が展開されている、ということです。質問があればすぐに学生が手を挙げ、教官とやりとりをする。100人を超える授業であっても平然と手があがります。だいたい、元NHK記者の池上彰さんバリに"Very good question"、と教官は言うんですよ(笑)でも、こういったひとつひとつのリアクションが、質問をしやすい雰囲気を作り出しているのだと思います。その質問のレベルは当然まちまちです。(印象としては、ややレベルが低い質問な気がします。それくらい自分で考えろし、って思うことも多々あります笑)

この点においては日本は、というか日本の学生は見習うべきだと思います。日本では、なんとなく「わからないことは恥」という空気があり、質問をする学生は大学ではかなり少ないと思います。そして、自分自身もそうです。中学生時代に習っていた先生が「何がわからないかわかることがとても重要」と言っていたのを、こちらに来てかなり強く思い出しています。何がわからないか、自分の中の不明点を明確にし、それを解決する、というこの作業こそが「勉強」であり、「学問」なのではないでしょうか。理系の研究なんて、これを当たり前のようにやっているのに、日常生活や大学の授業ではなかなかそれができないものなんですよね。わからないことがわかる瞬間ほど楽しいものなんてないのに。わかってるんですけどね、難しい。

日本の学生は、自分を含めて「質問」が苦手なのでしょう。就職活動でも「何か質問はありますか?」と逆質問をされることがあると言いますし、企業によってはそこで質問をしなければ落とす、とまことしやかに言われています。質問、というものはその人の興味・好奇心から生まれてくるものであり、質問をしないということはあまり自分の会社に興味がない、と判断してのことでしょうかね。この「質問力」をアメリカ人は初等/中等教育から鍛えられている気がします。以前友人に聞いたのですが、やはり質問をするように今まで教わってきた、とのこと。

何から何まで質問することを良しとは思いませんが、ここは見習いたいとひしひしと感じています、授業を受けるたびに。


2.アメリカは授業サポートがすごい

ここも大きく日本の授業とは異なる点だと思います。とにかく授業のバックアップがすごい。1つは、宿題です。宿題の量が尋常でないほど出ます。授業時間は週に3時間ほどではありますが、それを補うほどの宿題の量です。理系科目ではP-set(Problem-set)というものが大体テキストなどから出題され、毎週提出するのが常です。ただ、この宿題、やっぱり授業内容以外からも出題される事が多く、かなりの部分を自習に依存している印象を受けます。

それらの自習をサポートするのがTA(Teaching Assistant)です。日本の授業のTAというと、何やら雑用やレポートの採点のみ、という感じではありますが、こちらでは雑用やレポート・宿題採点はもとより、授業時間外のオフィスアワーでの質問応対、時にはエクストラの授業をTAが担当しています。TAは大学院生が多いのですが、こちらの大学院生は社会人として働いてしばらくしてアカデミックの分野に戻ってくる人もいるため、中には経験値だけで言えば教授より多いTAもいて、自分の受けている授業ではたまに授業中にTAに教授が質問することも…笑 週に5時間を超えるオフィスアワーは教授とTAの2人体制で運営し、熱心にこちらのわからないところを聞いてくれます。TAとも、教授とも距離が近い、それがアメリカの大学の魅力でしょう。日本では少人数のゼミの授業など以外ではそこまで教授との距離は近くないでしょうし、オフィスアワーというものは設けられていないことも多いですよね。

ちなみに、ECE(Electronic Computer Engineering)の講義を受けているのですが、このDepartmentではBest TA Awardなるものがあって、教授が「うちのクラスのTAにみんな投票してね!」ってわざわざメールを送ってきました。なんと、Best TAに選ばれると賞金2000ドルだそうです。考えられませんね、日本だと笑 それだけ、TAにもしっかりと任務をこなすインセンティブを与えているところがさすが、と唸るところです。

ただ、これを日本で設けた場合、果たして学生が利用するのか、という疑問は大いに有ります。1でも述べた通りまず日本人の学生は質問がないのでオフィスアワーを設けてもあまり先生のところを訪問しないでしょう。東大でも、教養の頃にある講義でオフィスアワーを毎週設けている教授がいらっしゃいました。何度か先生のオフィスを訪問して質問をしたのですが、自分以外にあまりいなかった記憶があります。確かにやっぱりハードルが高いというのもあるのでしょうが、一流の教授たちと直にそのトピックについて話せるというのは、分野を問わず魅力的なことだと思うので、やっぱりオフィスアワーは利用すべきだと思います。教授でなくともTAとも話すことは大きな収穫となるはずです。自分の場合、オフィスアワーはそこまで利用しないのですが、教授と話したり大学院生と話したり、ということはよくしています。良いアドバイスをもらえるときもあるので、とにかく自分から「先輩」と出会って話を聞く精神を持つことが、日本でも海外でも大事なのではないでしょうか。

まぁ、ただ、なんといいますか、この全体的な手厚いサポートの分、アメリカの大学は、やっぱり学費が高めです。これは大問題です。



3.日本の大学の方が圧倒的に試験が難しい…たぶん

日本の大学はまれに何でも持ち込み可(といってもパソコンとかはダメですが)の授業があります。こちらでその事実を話したところ、相当驚かれました。アメリカは1枚の自作cheating paperや電卓持ち込み可、というテストはよくあるようですが。で、何でも持ち込み可のテストって、それでも満点が取れないんですよね、日本の大学って。(というかこれは自分の今まで受けた授業の感想ですが…)これは、日本の大学の試験が「公式暗記」などそういったくだらないことに終始せず、本質的に原理を理解しているか、学んだことを有機的に組み合わせて考えられるか、ということを試しているからだと思います。もちろん、試験というのは担当する教官のさじ加減で決まりますから、この事実は一概に言えませんが、テスト、という側面では日本の方が圧倒的に難しく、優れた試験内容を平均して出題している印象です。
(これは12月の期末試験で自己否定せざるを得なくなりました…めちゃくちゃ難しいテスト、ありました…笑)

4.日本の理系学生であれば、卒論・修論が必須なのはすばらしい

こちらに来て驚いたのですが、アメリカの大学は必ずしもB.A.(学士)を取るのに卒業論文は必須ではないし、Master(修士)を取るのも修士論文が必須でないようなのです。(ちなみに修士に関しては、論文が必須、というコースもある。)

つまり、講義さえ取っておけば学士や修士の学位がもらえてしまいます。まだ自分は卒論を書いていないので、何とも比較はできないのですが、この点に関しては日本の方が圧倒的に優れた学生を生み出すシステムができていると思います。現在、研究をかじっている身としては、研究をしないでただ単に講義を受けてP-setだけこなして問題を解くだけで卒業、というとなんとも味気ない気がしてなりません。「研究」という答えのない課題を解く作業ほど楽しいものはない、と感じています。この作業こそがものすごく鍛えられる修行のようなもので、これを通過しないで卒業してしまうなんて、もったいないなぁ、と感じます。

なので、理系学生は、1〜3年半ばくらいまで海外大学で過ごし、3年後半から日本の大学に入り研究を始めて、卒論を書いて卒業すると、ものすごく鍛えられるんじゃないかなぁとずっと思っています(笑)膨大な宿題をこなし、自分の興味のある分野を3年生まで学んでおけば、この時点で大体の日本の大学生より賢いはずですw ただ、この案の最大のデメリットは所謂「学生生活」を謳歌できない、ところでしょうね笑 課外活動もやっぱりアメリカの大学だと少し日本よりは時間を割けませんし、日本の大学にいるならば、1・2年生の間は遊ぶなり課外活動に没頭するなりすることが重要だよね、と4年生になった今ひしひしと感じます。(自分の場合、課外活動ばかりでしたが…笑)


5.でも、日本の大学生は負けてないぞ

これは断言しますが、Undergraduate(学部)に限れば、圧倒的に日本の大学生の方が頭が良い。これはまぎれもない事実だと思います。(イリノイ大学の工学部は比較的名門です、一応。)基礎学力、という面において、日本の大学受験や中等教育を通過している日本の学生は負けるはずがない、そう思います。少なくとも、東大生に限って言えばほとんどの学生には負けないでしょう。(ただし入学時に限る…かもしれない。。。)この「入学時に限る」というのがとてつもなく残念なことですけどね笑
アメリカから大いに学べるのは高等教育のみです。話を聞くかぎり…ですが。


6.アメリカの大学にない部分を、日本の大学に通う学生は、自分で補わなくてはならない

この部分は先日ボストンでHCJI-LABのメンバーやアドバイザーの人たちと話していたときに出てきた部分です。アメリカの大学には、学生が求めるものが全てセットでそろっている。アメリカからの留学制度、奨学金制度、キャリア指導、先述のTA制度、起業支援、就職活動、その他なんでもそうです。考えつく限り、なんでも大学が手伝っていますし、認めてくれます。友人なんて、来学期は休学して、インターンしようかなーなんて言ってます。Semester Offと言うそうですが、この文化もかなりあるようです。なんなら、Semester Offをしなくても、単位をもらえるインターンもたくさん準備されているらしい。それに、その気になれば3年で学部卒業も可能だし飛び級も全然OK。

一方で、日本の大学はこういったものが多くはない印象を受けます。就職活動は支援はあまり手厚くありませんし、まず自分で外に探しにいく必要があります。でもアメリカの大学は、学業優先だから、といってリクルーターが大学まで訪問しますし、しょっちゅう大学の構内でキャリアフェアが開かれています。日本の大学は留学制度も手厚いとは言えない状況で、奨学金支援なんて、自力で探すのが当たり前。なんだか、日本の大学って学生に「非」協力的という印象しか受けません。よく言えば、放任主義と言えますし、そこまで悪いとはあまり自分自身は思いませんけどね。ですが、話を聞いたり、自分で経験したりした中だけですら、なんて日本の大学はお役所的で固いんだろう、と感じたことか。一方で、アメリカの大学は学生の声にとても耳を傾けてくれて、柔軟に対応している気がします。

また、日本の場合、国のトップダウンで制度化すればいいと思っている文部科学省にも問題があると思います。難しい問題ですし、自分にこうやって批判する権利なんてありませんが、日本の大学はそういった点でアメリカの大学を見習ってほしい、と強く要望します。例えば俺の今回の留学で単位を認めてくれる、とか(笑)

(※この項目に関しては自分が日本の大学の現状を知らなさすぎる、というのもあると思います。きっと自分が知らないところで手厚いサポートが多々行われているかもしれません。大学関係者の人がもし読んでいたら、怒られそうですね笑)


7.アメリカの学生はGPAを気にしすぎ

アメリカの学生はGPA(Grade Point Average:平均成績)を気にしすぎです。なので宿題も超一生懸命やるしテスト勉強も一生懸命やります。これはアメリカ的文化、と一刀両断してしまえばそれでおしまいなのですが、アメリカにおいては就職活動や大学院入学においてGPAはかなり重要なのです。日本は…そこまで気にしませんよね。高校生までは成績や偏差値をあんなに気にするのに大学に入ってから気にしなくなるっていうのが日本です。まぁその分日本の大学生は課外活動や部活に時間を割ける、というのが最大のメリットだと思います。このポイントに関してはどちらが優れている、とは判断できませんが、しっかりと勉強してきているような奴らと将来的に戦わなきゃいけないんだよ、ということはしっかり理解しておくべきポイントなんじゃないかなぁって思います。(まぁ、一部の学生は宿題を平然と写して提出して成績を稼いでるようですがw)



なんだか全体を通してやっぱり「アメリカの大学すごいだろ!」って言ってるようにしか聞こえませんが、そういうわけではないというのは、先述の通りです。それに、別に俺は「勉強ばっかしろ」って言っているわけではないんです。ただ、やっぱり「学生の本分は勉強」というだけあって、大学に入った以上勉強をすることがある程度の義務だと思うんです、学生として。でも、こんなことを今書いている自分は1・2年生の頃はマジックや飲み会、課外活動三昧で全然勉強してませんでした。

もちろん、部活に全大学生活を注いでいる人を批判する意図などは全くありません。むしろうらやましい。自分にはそういった本気で打ち込みたかったことが3年生以降見つからなかっただけのこと。むしろ、部活に大学生活を捧げた人の方がすばらしい、褒めたたえるべき存在だと強く思います。というか、一つのことに一生懸命な人って輝いてるしかっこいい。


めちゃくちゃ長いポストになってしまいましたが、ボストンにて久々の会った友人たちと話していて、ずっと頭の中にたまっていたことを吐き出してみました。留学が終わったときに、果たしてこの記事に自分は同意するんでしょうか。楽しみです。

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