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2012年11月15日木曜日

東大のギャップイヤー制度の課題、そしてプリンストンに学ぶ

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By torisan3500

とにもかくにも、東大が攻めています。(ように少なくとも、そう見える!)

大学入学時期変更のいわゆる「秋入学」を視野に入れて、入学前の学生に公式にギャップイヤーを認める、「初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)」を開始ということ。対象は30名程度ということですが、活動資金として約50万円ほどを支給ということでした。

これは、日本の他の大学がやっているところはありそうですが、東大がはじめる意義は大きいなと思っています。秋入学の際にも、日本中の大学に影響を与えたことからわかるように、東大がこのように、色々と制度を改革していくことは日本中の大学に影響があるんだとは思います。

さて。まず基本的なことですが、ギャップイヤーって、なんでしょう?
「ギャップイヤー」は高校卒業から大学入学の間に1年の休みをとって、、インターンやNPO、留学などをすること、あるいは、大学卒業から社会人の間であったり大学院にいく前であったり、を指すことです。

今回の東大のFLYプログラムの要点をとーってもカジュアルにまとめると、

  1. 高校卒業/浪人直後の学生が、大学生活の前に9ヶ月くらい学校を離れて色々経験するチャンスを与えて、お金は50万円くらい支援するよ!
  2. 何をやるかは学生が自分で計画を立てて、それを提出してくださいね!
  3. 社会性とか国際性、「世界的視野を持った市民的エリート」を目指す者のロールモデルとして、社会貢献するようなことやってね。
  4. 最初の1年は休学扱いだよー!だから授業料も免除です!でもあくまでも学生だから、図書館とかは使っていいよ。
  5. でも休学になっちゃうから、日本学生支援機構の奨学金をもらう人は、辞退してね。奨学金はもらっちゃだめ
ということでした。

うーむ、これ、学生に計画任せるんですね。てっきり、色々な選択肢を大学側が提供するものだと思っていました。

Twitterでも色々と流れてくる反応を目にしましたが、やっぱり多いのは

まだ大学入ってもいない学生に自分で計画しろってのは難しいだろうし、大学入ってから自分に必要なことが見えてくるだろうから、入学前の1年なんてよくない!

という論調のもの。
いやはや、大いに同意します。なんにせよ、じゃあ自分が高校卒業したときに、ましてや大学受験勉強をしながらこのプログラムで何をやるかなんて考える余裕はないですし、何をやればいいかなんて全くわかりません。相談できる教授がいる、とのことですがどこまで親身に面倒を見てくれるかわからないですし、やっぱりこの30人に対して専任にアドバイスをする人がいなくてはならないんだろうなぁとは思います。

ここがダメだ!と指摘するのであれば、やはりこの自主計画の部分でしょう。
東大自体は、以下のような計画内容を想定しているようです。
  • ボランティアなどの社会貢献活動(災害復興支援、学習支援、環境保全、医療・ 福祉・介護等)
  • 国際交流体験活動(語学留学、国際NPO活動への参加、長期海外渡航等)
  • インターンシップなどの就業体験活動(官公庁、自治体、企業、NPO等)
  • 農林水産業・自然体験、地域体験活動(地域おこし、農山村・漁村など出身 家庭・地域と異なる場での生活体験等)

いかに東大がこういった選択肢を広く受験者に提供していくかがカギだと思います。

いや、しかし今回、思い切りましたね、東大教養学部。秋入学にはとーっても慎重な学部であったにも関わらず、このようなプログラムをえいや!と決めてしまうとは。びっくりです。
僕自身、1年間休学をしてアメリカに留学をしていました。それは、自分の専門が決まってからでしたし、明確な目的を持っていったから、自分としては結構それなりに満足した留学/休学生活でした。けれども、高校生がこれを独力で決断するって、なかなか難しいでしょうし僕が高校生だったらやっぱり無理だなぁって思います。



・プリンストン大学に学ぶ?!

まるまる参考になるかはわかりませんが、ここであえて、海外の事例を紹介します。
アメリカのプリンストン大学は、入学前の学生に"Bridge Year Program"というものを提供しています。

Bridge Yearの説明文を読むと
Bridge Year is a structured nine-month program with a focus on community service and cultural immersion for Princeton students prior to the start of their freshman year.(拙訳:ブリッジイヤーは、プリンストン大学の学生が1年生をはじめる前に、コミュニティサービスや異文化に浸ることに主眼をおいて構築された9ヶ月のプログラムです。)

ということです。おぉ、まさに今回、東大がやろうとしていることとそっくりではありませんか!


そして、さらに
The volunteer placement. Bridge Year students are placed in volunteer assignments that serve local communities while enriching their understanding of the world. Bridge Year volunteers might teach in an elementary school or serve patients in a health clinic. Other placements might include promoting economic development or organizing environmental initiatives. Regardless of the assignment, participants work closely with the host community, collaborating earnestly and gaining a deep understanding of the lives and experiences of local people.(拙訳:ボランティア実習:ブリッジイヤーの学生は、世界への理解を豊富にすると同時に、ローカルコミュニティを助けるボランティアを割り当てられます。ブリッジイヤーのボランティアは小学校で教えたり、病院で患者へ奉仕したりすることになるでしょう。他には、経済発展を促進したり、環境イニシアチブを準備したりすることになるでしょう。割り当てられたものに関係なく、参加者はホストしてくれるコミュニティと、本気で協力し、地元の人々の生活や経験へのさらなる理解を深めながら、親密に働くことになります。)
であったり、さらにはこんなことまで。

The living experience. Bridge Year volunteers live with local families within the community where they serve, providing them the opportunity to establish meaningful relationships, develop and master language skills, and become a part of the local society.(拙訳:そこに住む経験:ブリッジイヤーのボランティアは自分たちがボランティアをするコミュニティ内の地元の家族と共に住み、意義深い関係を作り上げ、言語スキルを上達させ習得し、そして地元のコミュニティ社会の一員をなる機会を提供されます。)

Language training. Program participants receive intensive language training upon arrival on site. Conversational competence is stressed so that participants are able to apply learning to their service assignment early on and communicate effectively with others within the community.(拙訳:言語トレーニング:プログラム参加者は自分の場所についた瞬間から徹底的な言語トレーニングを受けます。参加者が早い段階で学んだことを仕事に活用することができるように、また、コミュニティ内で人々と効果的にコミュニケーションできるようになるため、会話能力は特に強調されます。)

Peer support. Students are placed in small groups at each program location, providing access to the support and comfort of peers throughout their year abroad.(拙訳:ピアサポート:それぞれのプログラムの場所で、小グループに学生はあてがわれ、支援へのアクセスや海外での1年を通した仲間の援助が提供されます。)

Destinations. Volunteers spend the duration of the Bridge Year in a country other than their own. Princeton currently sends Bridge Year participants to program sites in China, India, Peru and Senegal.(拙訳:行き先:自身の国以外の国でブリッジイヤーの期間をボランティアの学生は過ごすことになります。現在、プリンストンはブリッジイヤー参加学生を中国、インド、ペルー、そしてセネガルへと送っています。)

おぉ…セネガル…行ってみたい。しかし、中国、インドだなんて、旬ですね。

さて、気になるお値段ですよね。天下のプリンストン大学…でもお高いんでしょう…?

How much does it cost?(いくらかかるの?) The University is strongly committed to making the Bridge Year Program accessible to every incoming Princeton freshman, regardless of financial circumstances.(大学は、学生の経済状況に関わらず、プリンストンに入学する1年生全員にブリッジイヤープログラムへアクセスできるように強くコミットします。)
All core program costs for your Bridge Year will be paid for by the University. You will incur no tuition or living expenses during the entire nine months of the program. (ブリッジイヤーに関する全てのコアとなる費用は、大学によって支払われます。9ヶ月のプログラム期間中の学費、生活費は一切かかりません。)
Bridge Year participants and their families will typically be responsible for the cost of travel and other incidental expenses such as document fees, health insurance, immunizations and personal items. Need-based funding is available to cover such expenses, meaning that--depending on your family circumstances--your Bridge Year could cost you practically nothing.(ブリッジイヤーの参加者とその家族は通常、旅費や書類代であったり健康保険、予防摂取や個人の持ち物などに関する雑費は自身で責任をもっていただきます。あなたの家族の経済的事情に依りますが、それらの費用をカバーできる奨学金も必要な量だけ[ニードベースで]利用可能です。すなわち、あなたのブリッジイヤーの費用は、事実上、ゼロです。)

さすが、プリンストンですね。こういうところまで全て支払ってくれるようです。旅費は自腹のようですが9ヶ月の滞在費や食費までカバーされるというのはなんとも驚き。そして、中国やインドといった注目される国へ派遣し、現地の言語を学びコミュニティサービスをすることで、多くのことを学生は学べるでしょう。素晴らしいプログラムだと思います!

勿論、大学の資金力が違うので東大がこれをやるだなんて無理な話ですが、あえて、ここまでオーガナイズされたプログラムを提供し、少ない選択肢ながらも確実な学びが得られるプログラムを作り上げるということも、東大に是非考えてほしいところだなと思います!これからFLYプログラムのブランチとして、こういう風なものを提供することも、大学の一つの仕事なのでは?内部の学生として、とーっても気になるトピックですし、すこしでも自分が手伝えるのであれば手伝いたいくらい!

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