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2012年10月26日金曜日

Jiro Dreams of Sushiを観た

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Photo By CytecK

働く人間にとって最も大事なものとは何なのでしょうか。

その答えを少しだけ教えてくれた気がするドキュメンタリー、"Jiro dreams of Sushi"をやっと観ることができました。

"Jiro"といっても、一部の熱狂的ファンを生み出しているラーメン二郎のことではなく、銀座の数寄屋橋にある「次郎」という寿司屋のことです。タイトルが英語であることからわかるように、これは日本のドキュメンタリーではなく海外向けのドキュメンタリーです。

6月あたりに知り合いの方に薦められて、長い間観てみたいと思っていたので、このタイミングで観られてよかったです。


「次郎」はミシュランで常に三ツ星を獲得し、三ツ星レストランのシェフの中でも最高齢85歳の小野次郎さんが寿司を握る高級店です。(現在はお子さんが主に握っていらっしゃるようです。)どれくらい高級かというとお一人様3万円からとのこと。仕入れによって勿論値段は変化します。黙々と、カウンターに出される寿司を食べ続け、早い人だと15分ほどで終わるようです。つまり15分で3万円以上支払うレベルの高級店です。お酒を飲みながらつまみを食べて、シメに寿司を食べるというところではなく、寿司だけをこだわりを持って提供してくださる寿司屋なのです。予約も1ヶ月前から。この価格なのに人気店。海外からのお客さんも多い。食べる人皆納得する、すごいお店です。
(ちなみに写真は「次郎」の寿司ではないです…すみません。)

「どのお寿司もシンプル。」「シンプルを極めていくとピュアになる。」
そう、フードライターの方は「次郎」の寿司を表していました。

次郎さんの寿司への哲学、仕事への哲学、生き様をはじめ、お店の後継者育成(息子さん二人やその他の弟子の方々)、寿司に使う食材へのこだわり…これらのことがドキュメンタリーの中で語られるのですが、ここまでのこだわりを持っているのか!と驚かされてばかりでした。そして何より、85歳で世界の寿司職人の頂点に立っているといっても過言ではない次郎さんが「頂点なんて存在しない、どうしたらもっとおいしい寿司を作ることができるか」ということにこだわりを持って常に向上心を持っていらっしゃることが大変素晴らしかった。

どこまで内容に言及していいか迷うところなのですが、とても印象に残ったところが3点あります。

・修行
「次郎」の店で修行をすると、まずはお客様に提供するおしぼりを手で絞る作業(やけどをするほど熱いそうです)、そしてしばらくは魚にも触らせてもらえず、やっと卵焼きを作ることを許されるそうです。弟子の方は200以上の卵焼きを焼いて、やっとOKが出た、と。そこで初めて次郎さんに「職人」と呼ばれたそうです。10年でやっと。地道な努力、だそう。

・食材の最高の目利きと最高の寿司職人のコラボレーション
マグロのプロ、お米のプロ…彼らとの絶対的な信頼関係の下、寿司を作るプロの次郎の職人さんたちがその最高の食材を最高の寿司へと作り上げる。僕たちが食べる寿司は、寿司職人の方しか意識にないかもしれませんが見えないところで本物のプロたちが関わっているという事実を改めて知ることとなりました。

・ホスピタリティ(といって良いのかわかりませんが…)
お客様が女性か男性かで寿司のサイズを変更し、最初に食べた利き手を見てその後寿司を置く場所を変える、など、こちらが気づかないような気遣いが印象的でした。いやーこれはちょっと驚きました。


なんだか、このドキュメンタリーを観て、プロとしての仕事の流儀だとか心がけだとか、寿司職人に限らず多くのことに当てはまることを学んだ気がしました。
冒頭の質問、「働く人間にとって最も大事なものとは何なのでしょうか。」という問に対する答え、次郎さんは「仕事を好きになること」だそうです。あの年齢でもまだまだ良い寿司が作れると、もっと上を目指さなくては鳴らない、という飽くなき向上心は若い僕も見習わなくてはならないと思わされました。常に明日のことを考えている、ここで終わるってことはない。もっとおいしくならないか、もっと上手にならないか24時間ずーっと考えているのです。そんな完璧主義者。がんばろう。。。こういった向上心という部分も、最初の質問の答えでしょう。

さらに思ったこと。マジックという芸術(まだ、僕は芸術に昇華できていませんが…)を少しかじっている人間として、学ぶことも多かった。常に、24時間、そのことを考えなくてはよいものは作れないだとか、見えない部分の努力(寿司で言えば海苔をあぶったり、シャリの微妙な温度、全ての食材へのこだわり)を怠ればそれはプロではない、表に出さないお客様への気遣い、などなど…。そして彼は寿司という作品を提供するのですが、マジックであればそれがトリックであるわけです。お客様にどのような体験をしてほしいか、と常に考えていれば、取るべきアクションの答えは自ずと出てくるのだなぁと強く感じました。勿論、それを実行にうつすことが難しいのですが。本当に難しいとは思います。彼の場合はそれが「おいしいと感じて満足してほしい」ということになるのでしょう。そのゴールに達するまでがここまでの食材へのこだわりや技術なのだと思います。とにかく、自分にも他人にも厳しい。一切妥協をしない。その生き様に痺れました。かっこよすぎる。85歳でこれって。

あと、特に一視聴者として思ったのは、映像がとても素晴らしかった。寿司という食べ物を撮っている敬意があるのでしょう、とても美しく、ある種の芸術作品のように提供される寿司が撮られていました。映像の最後も、次郎さんの素敵な笑顔で締められています。それまで厳しそうな表情ばかり見せていた次郎さんのそのような笑顔は、こちらも幸せな気持ちになるようなもので素敵な映像と相まって「良いものを見た!」と心から思える作品でした。

実は今日からしばらくの間ニューヨークに滞在です。研究活動なのでなかなか観光もできませんし、更新できないかもしれませんが、ニューヨークの素敵な街をちょっとでも紹介できたらと思います。


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